しあわせな遅刻とレシートの束、そしてコーヒー味のガム|NPO法人シングルマザーズシスターフッド

執筆者:たなぼたはなさく 「おかえり」とやさしい笑顔で出迎え、雨が降ってきたら校門で傘を持って待っている、そんなお母さんたちのやわらかな姿を見かける時代にわたしは育った。母はちがった。となり町の会社で働き、いつも忙しそうだった。きれいに手入れされた指先、パリッとしたスーツ、いつも背筋がピンと伸びた母の姿は美しかったが、まなざしと物言いがまっすぐで怖かった。 近所の家から、楽しそうな笑い声が漏れ聞こえ、ほわーっとみそ汁のにおいが漂ってくる夕暮れ時。妹とわたしは、薄暗い台所でふたりきり、いつも母の帰りを待ちわびていた。大人になった今でも一日の終わりに差し掛かる時間、紅の夕日を見ると涙が

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